キツネにくるっと包まれる

旅に出たり美術展に行ったり食べ物を食べる

「趣味は?」と聞かれたら「一人旅です」と答えるためのノウハウーその1ー

「趣味は何ですか?」

 

この質問が、この世で尋ねられて苦しい質問NO1だと思っている。

 

どんな世界に生きていたとして、この質問に一回もぶつからずに過ごす、なんてことははありえないだろう。

なぜならばこの質問は無難中無難な質問だからだ。この質問ひとつ繰り出すだけで、会話と会話の隙間を埋めるのにもってこいだ。

距離感を掴み損ねている初対面に近い相手に対しては、発言の一つ一つに気を使い、間合いを読むことを求められる。だからこそのこの質問なのだ。相手を傷つけず、且つそこから話題を発展させようという気構えも感じられる、スーパーエリート級の質問だ。

 

だが、たぶんこの世の半分くらいの人は、こんなことを聞かれてしまったが最後、背中に汗をびっちょりかくのではないのだろうか。かくいう自分、狐西もである。

このタイプの人間がどのように答えるのかと言えば、非常に心を痛めながら「いや~特にないんですよね~。家に居てもごろごろYouTube見るくらいで~」というなんの面白味も無い回答をしてしまうのである。

 

最悪だ。

 

なにが最悪買って、回答が面白くもなんともないことに加え、せっかく相手が会話をはずまそうと振ってくれた話題をぶった切り、空気を重く苦しいものにしてしまうからである。さらには「趣味の一つも無い人間」というレッテルが、その場でびしゃりと自分自身に貼られてしまうのである。地獄だ。

 

どうしてこんなことにすら答えられないのか。

どうしてこんな炎で焼き殺されるがごとく苦しみが生まれてしまうのか。

 

恐らく大多数の人が当てはまるパターンはふたつある。

 

1:マジで趣味が無い

趣味がある人は、おそらく趣味を趣味として、それに時間や金を費やしている自覚がありながら生活しているはずだ。だがそうではない人は、刹那的に、衝動的に生きている。面白そうな動画を瞬発的に見て、なんとなく流行りの映画を見て、時々美味しい料理を食べて満足する。なにかひとつ、これが生きがいと意識して生きずとも、それなりに生活している。そうすると趣味が何かと問われても、別に答えることもできず言葉に詰まるのだ。

映画が好きでも、読書が好きでも、「映画鑑賞」や「読書」と答えて、「最近見て感動した作品は?」「どんな作家が好きなの?」と聞かれて言葉に詰まる。別に人にぺらぺら語れるほど、趣味として費やしていないので言葉と感情を持ち合わせていないのだ。にわかとも言える。にわかは悪いことではないのだが。

 

2:人に言える趣味が無い

これもある。たとえばアイドルを追い駆けてたり、アニメが好きだったり、ゲームが好きだったり、推しカプを追い求めることに生きがいを感じていたり、同人誌作成してたり。どちらかというと、”ヲタク”気質であるとこれに当てはまるかもしれない。上記はにわかが故に発言できないが、こっちはヲタクであるがゆえに言えない。人からヲタクと思われるのが嫌だわ~と感じたり、そもそもヲタクだからこそそのジャンルを知らん人と気持ちを共有したくなかったりする。だからへんな愛想笑いを浮かべて「映画鑑賞」や「読書」と言って本当の趣味をひた隠すのだ。

 

狐西はわりと2に当てはまる。正直自分の領域に必要以上に入ってくれるなと思っている。知らんひとはヲタク趣味に興味津々、時に悪意ではなく好意を持ってくれることもあるが、土足でずかずか入られると「ウッ」となってしまう。ヲタクのメンタルは繊細である。

 

しかしながら長い人生、「趣味は何ですか?」から逃げることは恐らく無理で、これから長い間、大げさではなく死ぬまで付きまとわれることは間違いない。だからこそ、「趣味は何ですか?と聞かれたとき用の趣味」を持っておくと、とても楽なのだ。

 

だからこそ、お勧めしたい趣味がある。”一人旅”だ。

 

実は狐西は長らく一人旅に出たことはなく、はじめて旅に出たのは20後半のことであった。そのころ人生に色々山あり谷ありあり、割愛するが、「このまま日本のなにも知らずに老いてどこにも行けなくなるなら、たくさんいろんな場所に出かけてみたい」と思い立ち、えいやで出かけたのだ。するとこれが面白く、いまでは一人旅が立派な趣味になった。

そして立派な趣味になったことで、「趣味は何ですか?」に堂々と発言できる”答え”を手に入れたのだ。これが、心の負担を大きく減らしたことは言うまでもない。

 

だが、一人旅がハードル高いよと感じる人も、世の中にはたくさんいるだろう。正直分かる。だが、この一人旅という趣味、「趣味は何ですか?」と聞かれ回答したとき、非常に受けがいいのだ。旅の話は老若男女盛り上がるし、同じく相手の旅の話も引き出せるし、場の空気はつなげる。イイコト尽くしである。

そんな不純な動機で趣味にしていいのかよと思われるかもしれないが、まあいいんじゃないか。別に趣味であることは変わりないので。

 

そんなわけで、一人旅に興味はあるけど実際どうすりゃいいのさ、と右も左も分からない人に初歩的な段階からノウハウをレクチャーしていきたい。